1年目のMR、
苦手な薬と向かい合うことに。
「今日からは、私も一緒に取り組ませていただきます。どうぞよろしく!」元気な声に、入社1年目のMRも、思わず「ありがとうございます!」と答えた。けれど、内心は不安で仕方がない。
電話の相手は学術担当者。リウマチ診療の拠点施設を担当するMRが選抜され、彼らをバックアップするプロジェクトが立ち上がったとのことだった。5カ月間、MRを学術担当者がサポートすると言う。
新人MRが不安を感じたのは、当時関節リウマチ治療薬オレンシアに対する苦手意識を持っていたためだ。難しい専門用語、同じ効能を持つ薬の多さ……いろいろな要素が混ざり合い、製品から遠ざかっていた。「大丈夫、分からないところは教えるから」という学術担当者の声も、不安を消してくれない。
メモを取ることしかできなかった1時間。
MRが担当していた施設は、リウマチ患者500名の専門病院。専門医が2人、100名の患者さんに対してバイオ製剤が使われているが、そのうち、オレンシアの使用は数例だった。
初めて医師向けの説明会を行ったのは、プロジェクトが始まって数週間後のことだ。主に説明することになったのは学術担当者。口数の少ない医師だったから、MRは「こちらからの情報提供ですんなり終わるだろう」と思っていた。しかし、違った。医師と学術担当者との間で交わされる、目まぐるしいスピードのディスカッションに、メモを取ることしかできない。
気づけば1時間が過ぎていた。自分にはとても無理だ。そうMRは考え、終わった後に「この先もずっと説明をお願いします」と学術担当者に言った。その瞬間、バシッと背中を叩かれる。「責任を持ちなさい。この施設の担当者はあなたなんだよ。」
MR以上に成果に喜んだ学術担当者。
その言葉を聞いてMRは気づく。困っている患者さんがいて、その患者さんを救いたい医師がいて、その想いに応えられるように私たちがいる。難しいとか、できないとか、そういう問題ではない。自分には、託された使命と責任があるのだ――
その日からMRは、必死で勉強を始めた。説明会で耳にした単語の意味、医師の言葉の意図、付随するデータ……たくさんのことをメモしては、学術担当者に教えを請うた。MRの質問に、説明会の予行演習に、どんなに忙しくても、学術担当者は付き合った。
学術担当者だけではない。上司は、営業所で定期的に勉強会を開催、研修会や学会への参加も快く送り出してくれた。
数カ月が過ぎたある日、MRは医師から声をかけられる。「先日紹介してもらったデータと同じ形でオレンシアを使ってみたよ。」飛び上がるほど嬉しかった。すぐに学術担当者に電話。「本当によかった。頑張った結果だね!」電話の声は、MR以上に弾んでいた。
「小野薬品はチームとして闘う」を実感。
5カ月はあっという間だった。今、MRは、一人で活動している。月80万だった実績は、今では280万にまで伸ばすことができた。何より、医師にオレンシアの良さを伝えることができ、患者さんに届けられていることが嬉しい。もし、と話す。「最初の説明会で逃げていたら、この喜びはなかったでしょう。学術担当者が、上司が、親身になって一緒に闘ってくれたおかげです。」そして、言った。「入社するときに、『小野薬品はチームとして闘う』と聞きました。それを実感した出来事です。」