「第4のがん治療法」へ道を拓く薬が完成。
「抗PD-1抗体「オプジーボ」。外科手術、化学療法、放射線治療に続く、「第4のがん治療法」へ道を拓くものとして、世界的に注目を集めている製品である。2014年9月に世界に先駆けて承認・倫理提供されると、早速、日本の臨床現場で使用が始まった。しかし、安全性情報に関しては、国内試験の少ない使用経験が頼りという状態だった。
まったく新しい作用メカニズムの薬であり、小野薬品は、副作用へのリスクマネジメントに取り組むことを決定する。副作用の頻度が非常に少ないことは分かっていたが、オプジーボによって、今までの抗がん剤とは全く異なる「免疫介在性副作用」が出現することがある。副作用リスクのマネジメントに取り組むことは、新薬を創り上げた企業の責任と小野薬品は考えた。
全員で想いを共有し、
多岐にわたる活動を行う。
プロジェクトの主体となったのは、製品の価値最大化を図っていく製品戦略部だ。副作用マネジメントを医療従事者に行っていくことで、患者さんに安全に投薬されることこそ、薬剤の価値の最大化につながる。何よりもオプジーボで治療を受ける患者さんのためになる――そんな信念を、プロジェクトメンバーの全員が共有していた。
その活動は多岐にわたった。副作用マネジメント中心の説明会の実施。患者さん、ご家族へ向けての副作用ケアの資材の準備。さらに、副作用症例の詳細情報を紹介するケースレポートの作成……。
組織の壁を越え、
協力しながらツールをつくり上げる。
プロジェクトメンバーだけではない。例えば、「irAEアトラス」という医療者へ向けての副作用マネジメントの教育ツールは、さまざまな部署が組織の壁を越え、協力しながらつくりあげた。営業本部が買って出た。ファーマコビジランス部からは、安全性に関する詳細情報の収集や集積データがもたらされた。メディカルアフェアーズ部は、論文や学会の情報を提供。研修部は、資材活用に関する研修をリードした。患者さんの副作用リスクを低減していくという課題に、小野薬品が一つになって取り組んでいった。
「我々医療者も勉強します。ありがとう。」
プロジェクトのメンバーは、ある施設の先生と面会した際に、「irAEアトラス」について言われた。「この冊子を製薬メーカーがつくったというから驚きだね。長年医療に携わってきたけれど、メーカーがここまで深く副作用事象の教育に入り込んだ資材は見たことがない。小野薬品さんが本気で患者さんを守ろうという意思が伝わってきたよ。」そして、最後に、医師はこう言った。「我々も、しっかり勉強します。ありがとう。」
メンバーはそのとき思った。信念をもって行う仕事の素晴らしさ。いろいろな部署のいろんな能力をもった人たちの協力で、できる仕事の楽しさ。そして、「ありがとう」を言ってもらえることの嬉しさ。
それは、小野薬品で味わうことのできる仕事の魅力そのものである。